
2010.06.22
国連による「気候変動よりもパワフル」な種の保全の事例
国連の生物多様性報告書は、自然界からの商品やサービスは、世界の経済システムに組み込まれるべきであると述べている。
自然環境の破壊を食い止めるための世界的なアクションについての経済的事例が、気候変動に取り組むに関する議論よりもさらにパワフルであると、この夏、国連の主要レポートで発表されることになっている。
気候変動に関するスターン報告書(2007年に英国国家財政委員会に対して準備されたもの)によると、気候変動を抑制することは年間に世界の富の1%~2%となるが、さらに長期的にみると5倍から20倍の経済的効果があると言われている。
国連の生物多様性報告書(別名、生物多様性版のスターン報告)においては、授粉、薬剤、肥沃土、清浄な空気、水などの'自然の商品やサービス'を保全する価値は、 さらに高く、これらを提供する生息地や種を保全する費用は10倍から100倍になると発表される模様だ。
国連の国際生物多様性の日を記念して、数百のイギリスの企業や慈善団体などが、自然史博物館の館長マイケル・ディクソン氏が警告している'the diversity of life, so crucial to our security, health, wealth and wellbeing is being eroded (生命の生物多様性という我々の安全、健康、富、福祉にとって極めて重要なものが徐々に破壊されている)'という公開書簡を支援することを発表している。
国連報告書の著者は、生物多様性に関するこの警告にさらに踏み込み、もし自然界から提供される商品やサービスが評価されず、経済システムに組み込まれなかったら、環境は現在よりもさらに脆いものとなり、ショックからの回復力が弱くなり、人間の命や暮らし、世界の経済を危機にさらすことになるだろうと述べている。
報告書の著者であり経済学者のパバン・スクデブ氏はこう言っている。「我々は、強制されるものとしてではなく、大事にしながら共に生きていくものとして、自然に対する考え方や行動を大きく変えていく必要があります。」
スクデブ氏曰く、この変革は、人間がビジネスのやり方、消費の仕方、自らの生活に対する考え方を大幅に転換することを意味しているという。彼は、在の自然界に対するダメージを'市場の失敗への展望'と言及している。
報告書は、世界経済の方向性の大きな変革を推奨しており、自然界の価値を組み込む方向を促している。将来的には、コミュニティが自然を使うよりも保全することによって富を得られ、企業が環境から搾取するものに対してより厳しいリミットを設けると共に過剰な開発に対する罰金や税金を強化し、農業・漁業・エネルギー・輸送のような産業に対する1兆ドル以上に相当する補助金を改良し、さらに企業や国家政府が自然資本や人間資本の利用に関するアカウントを公開することを目指している。
また、潜在的な経済効果も非常に大きい。ある見積もりによると、保護区の包括的なネットワークを形成し運営するためにかかる費用は、年間450億円になると推定されるが、保護区内の種の豊かさを保全することによって得られる利益は年間4~5兆円もの価値があると言われている。
報告書は続いて、世界が今直面している汚染や気候変動、開発による大規模な種の絶滅および熱帯林から湿地、マングローブやヒースの原野まで多様な生息地の破壊の現状などに関する、最新の研究を紹介している。しかしながら、世界の最大の企業といわれる100企業のうち、たった2つの企業だけが、生物多様性の減少が彼らのビジネスを脅かすという事実を受け入れているという報告もある。
「我々は時に、地球という惑星を宇宙船に例えます。我々は基本的には孤立した生命体であり、どこでどれだけ消費(搾出)できるのかには限りがあるのです」とパバン氏は語っている。
TEEBの報告書によると、平均して1/3の地球の生息地が、人間によって被害を受けており、その問題は北極から海洋、陸地の潅木地にまで広がっているようだ。また、危機に対する意識は高まっているにも関わらず、自然破壊はまだ広い範囲で続いているのだと警告している。IUCNの発表では、人間が関わらない自然界の絶滅速度の約1,000から10,000倍の速度で、種が絶滅していると見積もられている。
(執筆:Juliette Jowit)
※本記事はTEEB研究メンバーの依頼により、生物多様性の普及啓発を目的として、以下のGuardianウェブサイトの記事を翻訳し掲載しております。
http://www.guardian.co.uk/environment/2010/may/21/un-biodiversity-economic-report
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